吸血鬼はニンニクが怖い、というイメージをお持ちの方も多いと思います。
その理由として、吸血鬼が狂犬病にかかった方の異常行動をモデルにして生み出されたから、という興味深い仮説があります(参考：羊土社レジデントノート2014年11月号
https://www.yodosha.co.jp/rnote/trivia/trivia_9784758115414.html) 。

狂犬病になると脳神経がウイルスによって侵され知覚が過敏となるため、臭いの強いニンニクや光、大きな音は嫌がるそうです。その他民間に伝わっている吸血鬼の伝承も、ほぼ全て狂犬病の症状として説明できるそうです。

この話からも、ニンニクは臭いの強い野菜の代表選手なんだなと感じてしまいますね。
※日本における狂犬病の感染報告は1958年以来ありません。

エジプトというと、ピラミッドを思い浮かべる方が多いと思います。

古代ギリシアの歴史家ヘロドトスは、著書「エジプト史」の中に、エジプトのピラミッドの上に刻銘された象形文字に「ピラミッドの建設に従事した労働者が大量のニンニク、タマネギ、ラディッシュを食し、この購入のために高額の銀が支払われた」と書いてあったという逸話を記しています。

非常に高温であるエジプトの砂漠において、人力で巨大なピラミッドを建設できたのは、疲労回復に良いとされるニンニクが貢献していたのかもしれませんね。

なお紀元前1300年頃造営されたツタンカーメン王の墓の中からは、乾燥したニンニクの鱗茎（球根）が発見されており、非常に古くからニンニクは重宝されていたのだと感じます。

さらに詳しく知りたい方は、こちらをご覧下さい↓↓
http://www.wakunaga.co.jp/garlic/history/index.html

皆様は、「柚子湯」に入ったことがありますか？風邪を予防する目的で、昔から冬至に行われている “薬湯”（果物や野菜といった植物を入れた風呂）の一つです。実は、薬湯にニンニクも使われることがあるのを、ご存知でしょうか？

「ニンニク風呂」は、身を傷つけないように注意して皮を向いたニンニクを、ガーゼ等の袋に入れて浴槽に沈めることで、簡単にできます。民間伝承として冷え症やアトピーなどの皮膚疾患に有効とされる報告もあるそうです。こうした働きは、ニンニクの持つ血行改善作用、抗菌作用あるいは保湿作用などが影響しているのではないかと、考えられています。

なお、「ニンニク風呂」に入って身体が臭くならないのか気になるところですが、入浴後しっかり水分を拭き取るようにすれば、周りから指摘されることは無いとのことです（浴室は換気扇を回しましょう）。

気軽に試せて身体も温まる「ニンニク風呂」、寒いこの時期に一度試してみるのも面白そうですね！

今回は、“行者にんにく”についてご紹介します。

“行者にんにく”は日本で昔から山菜として食されてきた多年生草本です。北海道、東北に多くみられ、特にアイヌにも親しまれていることから別名アイヌネギとも呼ばれています。名前はニンニクですが、実は私達が知っている“ニンニク”とは別物です。例えばニンニクの球根は球状であるのに対し、“行者にんにく”の球根は円筒状になっています。そしてニンニクは球根を主に食べますが、“行者にんにく”は葉を主に食べる山菜です。植物学的分類で見ると、ネギ科ネギ属までは共通ですが、種はニンニクが“ A. sativum”に対して“行者にんにく”は“ A. victorialis”と異なっています。

なお“行者にんにく”という名前は、「昔、行者（修行を行うもの）が雪解けのころ、山野で修行中こっそり食べて体力をつけたことが、まるでニンニクのようである」ということに由来するそうです。ニンニクは体力をつける野菜の代名詞的存在でもあるわけですね。

参考：ニンニクの科学　齋藤洋、湧永製薬株式会社　朝倉書店
「健康食品」の安全性・有効性情報、医薬基盤・健康・栄養研究所

今回は、日本におけるニンニクの伝承をご紹介します。

万葉集第16巻の中に『醤酢（ひしほす）に蒜搗（ひるつ）き合てて鯛願（たいねが）ふ』という歌が出てきます。この『蒜（ひる）』が、ニンニクを指しています。歌は、「醤（今の醤油のようなもの）と酢を混ぜたものに蒜を潰して、鯛を食べたい」という意味になり、鯛を食べるための調味料又は薬味として、ニンニクを使っていたと思われます。

現存する日本最古の和歌集とされる万葉集の中でニンニクが歌の中に出てくるということは、当時からニンニクが生の魚を食べるときの薬味として貴重な天然物であったのかもしれません。白身の鯛をニンニクを使って食べるというのは、ちょっと驚きですね。

出典：ニンニクの科学　齋藤洋、湧永製薬株式会社　朝倉書店

餃子や焼肉などニンニクの入った料理を食べると、食後や翌日の口臭が気になるという方は多いと思います。口臭を防ぐために、ニンニクの臭い成分を閉じ込める食品（リンゴやキウイなどの果物、ナスやほうれん草などの野菜、ご飯、牛乳など）を一緒にとるのが良いと、一般的によく言われています。

臭いを閉じ込める食品の一つである牛乳とその成分に関して、オハイオ州立大の研究グループが興味深い報告をしています[J Food Sci. 2010 75(6):C549-558.]。この報告によると、低脂肪より高脂肪の牛乳の方が臭いを閉じ込める効果は高く、しかも食後よりも、食中に飲んだ方が、臭いを閉じ込める効果が高かったということが、認められました。

牛乳はニンニクの入った料理を食べた後に飲むよりも、食べながら飲んだ方が良いというのは、ちょっと意外で驚きの結果ですね！

今回は、ニンニクの英名「ガーリック」の語源について触れてみたいと思います。

ガーリック（Garlic）の語源は、アングロサクソン語で槍を意味する「Gar」と、ネギを意味する「Leek」を組み合わせたものだそうです。

アングロサクソン語は、5世紀から12世紀（日本では、古墳時代から鎌倉最初期に相当した期間）を中心にイングランドで使われていた現代英語の祖語（源となっている言語）にあたる言葉で、ニンニクの先端や葉の形状が槍に似ていることから、このような言葉が使われたと考えられます。

日本における“ニンニク”の語源は、有効な作用があるものの強烈な臭いがあるので、その臭いを『耐え忍ぶこと』という意味を込めて「忍辱」という仏教用語が語源となっているそうです。興味深いことにイギリスで使われた言葉である“Leek”という言葉にも、「eat the leek（屈辱を忍ぶ）」という慣用句があり、同じ「忍ぶ」というニュアンスが出てきます。

遠く離れた日本とイギリスで共通のニュアンスを持った言葉が出てくるというのは、驚きを隠さずにはいられないですね。

カツオを使った料理というと、「カツオのたたき」を思い浮かべる方も多いと思います。カツオのたたきは薬味として、ショウガ、ワサビといった香りの強い薬味がよく添えられますが、高知ではニンニクもよく使われます。

なぜニンニクを使うようになったのか・・そもそも「カツオのたたき」誕生は、江戸時代、土佐藩主の山内一豊（やまのうち　かずとよ）がカツオの生食を禁じたことに端を発するそうです。当時カツオは高価な魚だったことから贅沢を禁止するため、あるいは冷蔵・冷凍の技術が発達していませんでしたので、食中毒を予防するといった点から、生食を禁止したのだと考えられます。

そこで、漁師はカツオの表面をさっとあぶり、焼き魚と言って食べたそうです。これに消臭・殺菌・防腐といった効果を期待してニンニクやネギといった薬味をたくさん載せて食べたところ、非常においしく、その食経験が「カツオのたたき」の原型になったとされています。

戻りカツオの美味しい時期といえば8月下旬から9月にかけてです。もしこの時期に「カツオのたたき」を食べるときは、高知の食べ方を試してみるのも美味しそうですね！

オリンピックとニンニクの関わりについて紹介します。

オリンピックの歴史は古く、現在のオリンピックの前身といえる「古代オリンピック」が始まったのは、考古学的な研究により紀元前9世紀（日本では縄文時代に相当）頃とされています。当時は中・長距離走、ボクシング、ペンタスロン（短距離競走、幅跳び、円盤投げ、やり投げ、レスリングの5種目を一人の選手が競う競技で、3種目以上を制した者が優勝者と認定されていた）といった競技が、行われていたそうです。

そして当時は、ニンニクが持つ強壮作用などを期待して、参加者は競技前に一片のニンニクを食べていたそうです。

過去のニンニク豆知識で登場した、エジプトでピラミッドの建設労働者が食べていた時代から、古代オリンピックの時代までニンニクの強壮作用が伝わっていたと思うと、ニンニクの凄さや貴重感が伝わってきますね。

出典：日本オリンピック協会 https://www.joc.or.jp/sp/column/olympic/history/001.html
The Journal of Nutrition, 131(3), 2001,951S–954S

今回は、日本におけるニンニクの伝承についてご紹介します。

紫式部によって書かれた小説「源氏物語」の中に、ニンニクが登場するのをご存知でしょうか？源氏物語の中に、「極暑の薬草を用いて臭いので会えませんが、ご用は承りましょう」という一文が出てきます。この「極暑の薬草」はニンニクを指しており、臭いが強烈なので会うことができないということになるそうです。

ニンニクが暑い夏を乗り切る体力をつけるために食べられていたということが、世界最古の長編小説でも示されているとは、なんとも驚きですね！

今回は、現存する日本最古の歴史書に登場したニンニクの逸話について、紹介します。

712年（奈良時代）に発行された「古事記」の中に、小碓命（ヤマトタケルノミコト）の東伐（東国にいる乱暴な神々などを、征伐すること）に関する逸話が出てきます。その中に、以下のような記述があります。

「倭建命（ヤマトタケルノミコトを指す）は、東国を平定（従わない者を力によっておさえつけ、平静な状態にすること）した後の帰途にあった。足柄山の坂本（今の神奈川県）で食事をしているとき、坂の神（山の神）が白鹿に化けて倭建命の前に現れた。そのとき、倭建命は食べかけの蒜（ひる、ニンニクのこと）を白鹿の目を狙い投げつけ、打ち殺した」そうです。　この記述からニンニクは、①食べることで自らの体を守る、②魔除けとなることが当時信奉されていたのではないかと、想像されます。

ヨーロッパにおいて、ニンニクはドラキュラに対する魔除けとして伝承されていますが、日本でもこんなに古くから邪悪なものを退治する魔除けとして伝承されていた（記述が残っていた）というのは、大変驚くべき話ですね。

出典：ニンニクの科学　齋藤洋、湧永製薬株式会社　朝倉書店、にんにくお役立ち辞典：
https://xn--t8jj9cuba3v613qh5e1v0bkd1d.net/ninnikukora/ninnimayoke.html

今回は、ニンニク誕生にまつわるインドの伝説について紹介します。

現存するサンスクリット語（古代から中世にかけて、バングラディッシュやパキスタンなどのインド亜大陸や、東南アジアにおいて用いられていた言語）最古の医学書とされる「バウアー文書（バウアーは英国インド軍の命によりやってきた大尉で、バウアーが購入したことからこの名がついた）」によると、ヒンズー教における天の神々であるデーヴァ族は、海からアムリタ（乳海と呼ばれる海に様々な素材を投げ込んで1,000年もの間撹拌して作られる神秘的な飲料）と呼ばれる不老不死の霊薬を作り出し、敵との戦いで疲弊した体を癒すため飲んでいたとされます。

あるとき、デーヴァと敵対するヒンズー教における悪魔、アスラ族の長がアムリタを盗み出し密かに飲んでいたところ、ヒンズー教の神で世界を維持する役目を持つとされるヴィシュヌに見つかり、首をはねられてしまいました。その際、喉の血管に達していたアムリタの滴（しずく）が大地に落ち、ニンニクが生まれたそうです。これが伝説上のニンニク誕生の秘密とされています。

不老不死の薬アムリタから生まれたとされるニンニクは、その伝説のとおり古代の戦士が戦いの前後に食べていたと考えられます。最古の医学書の記述から、不老不死の薬であるアムリタに近いイメージで古代人がニンニクを重宝していた歴史が感じられ、ニンニクの素晴らしい力に対して本当に驚嘆するばかりですね。

出典：ニンニクの科学　齋藤洋、湧永製薬株式会社　朝倉書店